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TUBUCOLORワークショップinミラノ2014レポート
『自ら手を動かして色を経験することで、デジタルとリアルの距離は圧倒的に近くなった』

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今年で3年目を迎えた東洋インキのTUBUCOLOR海外ワークショップは、イタリアの大手テキスタイルメーカー、ズッキ・グループが保有する18世紀から20世紀初頭にかけてのプリント木型コレクション(約5万7千個)の一部があるミラノのテキスタイル工房「L'HUB(ラブ)」を会場に開催された。
クリエーターのみならず一般の人にも色そのものに関心をもってもらい、色彩のコミュニケーションツール、TUBUCOLORの普及を図るのが狙いだ。
(文:安西洋之/ビジネスプランナー、写真:廣瀬智央)


「白いランチョンマットに木型でプリントしていくのが、こんなに難しいとは思いませんでした。クリエイティビティーとは何かに気付かされますね」と熱を込めて感想を語るのは、ワークショップ参加者の1人。

2014年9月12日からの3日間、ミラノのテキスタイルの工房「L'HUB(ラブ)」で東洋インキ主催のワークショップが開催された。海外でのワークショップはバンコク(2012年)とジャカルタ(2013年)に続き3都市目だ。
クリエーターのみならず一般の人にも色そのものに関心をもってもらいながら、同社の開発した色データをストックするスマートフォンアプリケーション、TUBUCOLORの普及を図るのが今回のイベントの狙いだ。

プリントの準備をするL'HUB のオーナー、バルバラ・ズッキ氏
TUBUCOLORを使って気に入った配色をさっそく投稿
Photo by Hagakure

ヨーロッパ市場のビジネス展開を加速化

イタリア人は色に対して実に敏感である。親が小さい子供に靴と靴下の色の組み合わせを教え込む躾は象徴的だ。一方、2015年にはミラノ万博が開催されるので、TUBUCOLORを事前にイタリアで広めておくのは時機も合っている、との判断が東洋インキにはあった。
もちろん、これからヨーロッパ市場にさらに力を投入していくとの方針もある。同社は昨年4月、ベルギーのUV硬化型インキメーカーを買収している。新興国の市場開発と並行して、先進国でのビジネス展開も加速している。
そこで、この6月に欧州市場向けのフェイスブックページ「Toyo Ink-Coloryour life」を開設し、色を題材とした画像やフレーズなどを英語とイタリア語で投稿を続け、ファンの基盤を作ってきた。

リアルとヴァーチャルの色の出会いの場

ワークショップの場所に選ばれたL'HUBには、大手テキスタイルメーカーのズッキ・グループが保有する18世紀から20世紀初頭にかけてのプリント木型コレクション(約5万7千個)の一部があり、生地のデザインから服の完成までを一貫して学べる。

ワークショップは同じプログラムで合計6回行われた。毎回、L'HUBのオーナーであるバルバラ・ズッキ氏の主旨説明の後、L'HUBのコミュニケーション担当のマリア・テレーザ・ジラルディ氏が、色は人にとってどんな意味をもつかを話し、色は印象を記憶する大切な要素であることを強調した。また国によって同じ色でも違った意味をもち、例えば白は欧州ではウエディングドレスの色であるが、日本では白装束にみられるように死を連想させる色でもある。

次に前述のToyo Ink-Color your lifeのページ運営やTUBUCOLORのプロモーションを担当する、デンシー・ハガクレグループ(デジタルマーケティング分野においてイタリアで最大規模の企業)のアレッサンドラ・ザバッタレッリ氏が、TUBUCOLORのコンセプトを動画と共に解説。

1本目のビデオは、グラフィックデザイナーが街を散策するなかで見つけた自然の断片を撮影し、そのなかから印象に残った色をTUBUCOLORのパレットに記録しておき、実際にウェブサイトのデザインをする際にそれらの色を使う例が紹介されている。




2本目のビデオではスタイリストが洋服のコーディネーションで探している色をTUBUCOLORにストックしておき、それらを参照しながら青空マーケットで陳列されている服をリサーチする




こうしたオリエンテーションの後、ヴァーチャルの色とリアルの色の出会いのワークショップがスタートした。

白いランチョンマットがカラフルな世界へ

ズッキ氏が使用する色をプレートに並べ、木型への色の載せ方やスタンプの押し方のコツを伝え、各参加者は大きなテーブルで白いランチョンマットに思い思いにデザインしはじめた。ある人は他人の動きも眺めながら、木型を手に持ちながらじっと考え、ある人はあまり考えずに筆で絵を描いていく。
思いのほか多いのは、アルファベットで言葉をデザインしていくパターンだ。緑色を使ってVERDE(イタリア語で緑色)とスタンプする。最初のステップでは程よいスタンプで洗練されていたのが、スペースを埋めようとの意識が先走り、最終的に混沌としたデザインとなり反省する表情もある。それぞれ参加者の個性が出ており興味深い。

最終日のワークショップが終わった後、工房の棚に作品を飾り、ワークショップ参加者とブロガーが集まりワイングラスを片手にしながら、それぞれのデザインを鑑賞。気にいった柄を写真にとり、その場でTUBUCOLORにアップロードする姿も見られた。
そしてブロガーがネット投票を行い、多くの票を集めた順に作品が発表された。結果、1位と2位は同一人物で、ヴァレンティーナ・ディタリア氏のランチョンマットが選ばれた。ファッション・イラストレーターのディタリア氏は「ワークショップでは基本色の組み合わせに挑戦してみましたが、これから深めていきたいと思うヒントや刺激を得ることができました。またTUBUCOLORは色のデジタルストックができて便利だと思います」とスマートフォンを片手に語る。

プロジェクトをコーディネートした前述のザバッタレッリ氏は、「参加者もブロガーもワークショップのプログラムにそうとう深くまで入り込んでいただけました」とワークショップの成果に自信を持つ。
自ら手を動かして色を経験してもらうことで、デジタルとリアルの距離は圧倒的に近くなった。欧州でのTUBUCOLORの今後の普及が期待できそうだ。

ブロガーのネット投票で1位と2位の作品を制作したファッション・イラストレーターのヴァレンティーナ・ディタリア氏
投票で上位を獲得した作品が、集まった参加者の前で披露された

TUBUCOLOR®とは

ワークショップで使用したアプリ「TUBUCOLOR」(ツブカラ)は、色彩のコミュニケーションツールだ。スマートフォンで撮影した写真から色を抜き出したり、RGBの数値を調整して作った好きな色や、気になる色を投稿でき、ほかの人が投稿した配色セットを見たり、お互いにコメントを付け合ったりできる。カラーデータを共有することで、トレンドを把握したり、発想支援ツールとしても活用できる。

詳しくはこちら→http://www.toyoink1050plus.com/tools/tubucolor/


※この内容は、『日経デザイン』(日経BP社)2014年11月号(10月24日発行)に掲載されています。

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