INTERVIEWアーティスト・クリエイターズインタビュー

SHOHEI TAKASAKI

アーティスト・クリエイターが彩る色彩の世界

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表現の幅を広げている注目のアーティストが考える〈色〉とは?

ショウヘイさんは絵を描いていく上で、<色>というものをどのように位置付けていますか?

あまり考えたことがなかったですね。でも、色はもともと好きなので、そこからイメージしていくこともありますよ。僕の場合、作品を作るための方程式のようなものがあるわけではなくて、前に進んで行きながら、分岐点が現れる度に、新しい扉を開けていくような作り方をしているんです。だから、常に白紙の状態から描き始めるんですけど、例えばピンクやブルーといった色が取っ掛かりになることもあります。ただ、最初に浮かんだ色が、完成した作品には使われていないということもよくあるんですけどね。

描いていく過程で最初に浮かんだ色がどんどん変化していくのですか?

「こういうものを作りたい」という最初のイメージを、最終的な画面に残せたことは一度もないんですよ実は(笑)。その変化していく過程を楽しみながら作っているところがある。色というのは無限にあるじゃないですか。その中で、あるピンクが頭に浮かぶのは、ほんの一瞬に過ぎないんです。そこからグラデーションのように赤になったり、黄になったりと、どんどん変化していく。そうした変化の繰り返しによって作品が出来ていくので、フィニッシュした時の色というのも、あくまでも変化の過程の中でたまたま出てきたものだったりするんです。

その時々の気分や感情によって、ショウヘイさんの中で絶え間なく色が変化していっているのかもしれないですね。

そういうことかもしれないですね。でも、変な話ですが、描き終えた時に「この絵がブルーじゃなくてピンクで本当に良かった」と時々思うことがあるんです。ちょっとわかりにくいかもしれないですが(笑)、ある意味ギリギリの状態で作っているところがあるんですよ。そこで使われている色というのは、その時の自分の気分が反映されたものだと思いますが、そこには何かしら必然性があるんです。

例えば、描き終えてしばらくしてからその絵を見た時に、違う色の方が良かったと後悔するようなことはありませんか?

それはないですね。要は、フィニッシュした時点で自分が納得できていればいいんです。仮に次の日に同じ絵を見て「全然ピンクじゃない」と思ったとしても、描き終えた時に納得した感情というのは自分の中に残っているし、そこでその作品は完結している。

作品の中で使われている色は、実際にどこかで目にしたものなのですか?

そうですね。正確にそれと同じ色になっているかはわかりませんが、自分の思い出のようなものです。色に限らず、僕の作品というのは、何かを見ながら描いていくようなものではなく、例えば、昨晩飲みに行った時のこととかを思い出しながら、頭の中に残っているものを描いていくんです。だから、色に関しても、思い出の中の映像を忠実にトレースをしている。やっぱり経験したことじゃないと描けないし、自分に対しての説得力もないんですよね。その時に自分が置かれていた環境や一緒にいた人、食べた料理の味、におい、感動したこと、イヤだったことなど、そういうさまざまな記憶が、僕の作品のもとになっています。

色は毎回自分でオリジナルのものを作っているのですか?

ほぼ100%自分で作っていますね。自分の表現したい色のイメージがあって、それを出すために色んなものを混ぜていて、それはインクだけにとどまらず、どこかに行った時に拾ってきた砂や石などを入れることもあります。そうすると面白いテクスチャが出たりするんですよね。その時の気分に合わせてどんどん色んなものを入れたりしています。また、僕の場合は、一度に画面すべてを埋め尽くすほどの量の色を用意することはなくて、ポイントごとに色を作っているので、画面をよく見ると、同じ色でもところどころ表情が違うことが分かると思います。

一度塗った色を変えていくこともあるのですか?

そうですね。変えていくことは無限にできるからこそ、自分のやりたかったことは何なのかというのをしっかり見極めることが大切。どうしても作品の中に入り込んでいってしまうと、それが見えにくくなってしまうこともあるんですね。これは色に限ることではないですが、途中で一旦引いて、自分の作品を客観的に見るということをするようにしています時々。それこそ、描きかけの絵を1年くらい放っておくようなこともありますよ。しばらく部屋の片隅に置いていて、ある時にパッと見たら、「あ、もうこれで完成していた」とか「もうちょっとピンクが必要かな」というのが分かるということも多いですね。

個人の色彩感覚というのは、その人が暮らしてきた環境などにも影響されるように思いますが、そのあたりに関してはいかがですか?

いま考えると、うちの母親の影響があったかもしれません。うちの母はかなり破天荒な人で、気づいたらいなくなっていて、しばらくしたらドレッドヘアになって帰ってくるような人だったんです。もともとレゲエが好きで、家の中には常に音楽が流れていて、僕は友達と同じように例えばチャゲアスとかを聴きたかったんだけど、ボブ・マーリーしか聴かせてくれなかったりて(笑)。着ている洋服もぶっ飛んでいたし、カラフルな原色のレイヤーが重なっているような雰囲気の人だったんですよ。その影響が知らないうちに自分の中にも入ってきていたのかもしれないですね。いままで色についてそんなに考えたことはなかったですが、こうして話してみるとなかなか面白い(笑)。人によって見えている色や抱く感情というのも違ったりしますもんね。

数値的には同じ色でも、個人、人種、国籍などの違いによって、捉え方は変わってきますよね。

そうですよね。例えば、赤は情熱、青は冷静というように、特定の色からイメージされるものというのがあるじゃないですか。そういう色に対する一般的な概念みたいなものを自分の表現や色の使い方によって変えられるようなものが作れたら面白いし、自分の作品を見た人それぞれが、さまざまな色を想像できるようなものが作れたらいい。

固定概念にとらわれない自由な表現というのは、ショウヘイさんのクリエーションに通底しているマインドだと感じます。ショウヘイさんにとって「自由である」というのは、どういうことなのでしょうか?

まずひとつは、日々を素直に生きること。そしてもうひとつは、自分の表現に自由でいるということですね。例えば、いま僕は絵を描くことがメインになっていますが、小説を書いてもいいし、ダンスをしてもいいし、写真や映像を撮ってもいいと思うんですね。特に最近は、どんな媒体であれ、その表現がしっかり自分のものになっていればいいんだと考えるようになりました。逆に、自分の表現をひとつに固めてしまうと、クリエイティビティが制限されてしまう。そういう意味で、自分の表現に自由でいたいという思いが強いんです。

最近取り組まれている立体作品などにも通じる話ですね。

そうですね。ここ数年は、人間の身体をテーマにしているのですが、人間のシェイプというのは、数あるオブジェクトの中でも特に立体的なものだという印象があったんですね。最初はそれをどうやって平面に残すかということをやっていたのですが、立体物というのは角度によって見え方が変わってくるじゃないですか。その展開図を描いているようなイメージがあったので、それならいっそ立体も作ってみようと。だから、自分の中では平面と立体の違いはそんなに意識していないんです。

今後はさらに表現の幅が広がっていきそうな気がして楽しみです。

自分のヌード写真を撮っているんですが、それも作品として発表したいと思っています。ただの僕の裸なんですけどね。でも、もともと僕の作品というのは、すべて自分が経験したことがもとになっているから、ある意味自画像を作っているようなものなんですよね。だから、ありのままの自分自身を写真に残すということもあまり変わらないんです。こうしたものをペインティングや立体作品と同じような位置付けで発表してみたいし、そこからはいまの自分というものが読み取れるんじゃないかなと思っています。

ありがとうございました!


プロフィール

SHOHEI TAKASAKI / ペインター、グラフィック・アーティスト

www.shoheitakasaki.net

国内外で作品を発表するファインアーティスト。力強いラインと躍動的な色で純粋に感情を表現する。表現メディア、舞台は広く、その全てにおいて自身を強く表現している。

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