INTERVIEWアーティスト・クリエイターズインタビュー

真鍋 大度

アーティスト・クリエイターが彩る色彩の世界

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真鍋大度は〈色〉についてどんな視点で考えているのか?

真鍋さんは東京理科大の理学部数学科のご出身ですよね。
その後に、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)に入られて、理系からクリエイティブの世界に身を置いていますが、まずはその経緯から教えてもらえますか?

大学を卒業してサラリーマン時代にプログラムを使った仕事に就いたのですが、当時はCやVisualBasicといったアプリケーション開発ソフトで開発をする仕事ばかりで、デバイス制御とかは今と似た感じですが、オーディオビジュアルのプログラミングは相当敷居が高くて手を出せませんでした。Max/MSP(音楽制作ソフト)で初めて自分の制作ツールが出来たという感じです。周りにやっている人も全然いないし、情報もあまりないしでIAMASに進学することに決めました。

クリエイティブの土台はIAMASで学んだんですね。

僕は大学院じゃなくて、DSPコース(インタラクティブなパフォーマンスやインスタレーションを中心に教育と研究を行うコース)という専門の方に行ったんですけど、学んだというよりは、友達と色んな作品をがむしゃらに作ったり遊んでいたっていう感じですね。「IAMASは人生のサービスエリア」と言っている友人もいましたが、それぐらいゆっくり色んなことを考えたり取り組む時間がありました。

真鍋さんはコンサートのステージの演出、PVの監督、それから広告のビジュアル素材の制作、DJ、VJ、楽曲制作とか、様々な領域を横断していますよね。
例えば自己紹介するときに、ご自身の職業や仕事内容をどう伝えているのですか?

一言で言うと、プログラマーです。インタラクションデザイナーと言う時もあります。作品制作の中で一番重要かつ時間をかけている作業はアーティスティックなことよりも職人的なプログラミング作業だったりするので、プログラマーと言っても良いかなと思っています

例えばジャンルという壁があるとしたら、真鍋さんはその垣根を越えようとしている印象があるのですが、ご自身の活動を通じて、どんなことを実現しようとしているのでしょうか?

僕が属するライゾマティクスでは広告の仕事を比較的多くやっているんですけど、ライゾマティクス代表の齋藤(精一)とは、会社を作る前から、インタラクティブなこととかは絶対に広告で使えるという話はしていたんですよね。その頃は切り開くまでは言わないですけど、可能性があると思ってプロトタイプやデモをたくさん作って色んなところに売り込みにいきました。当時、既にセミトラさんや石橋(素)さんはプログラミングやハードを駆使してプロジェクトにしていたのでライゾマがやっている仕事のルーツはそこにあるかと思いますが、広告で本格的に展開出来たのは齋藤の存在が大きいですね。

では色の質問に移りますが、プログラマーとして色について聞かれることはありましたか?

ないですね。でもそれこそ、8年前にやった『Refined Colors』というプロジェクトは、世界中を旅しながら、20都市ぐらいの街で撮った写真から色を抽出して、その色をLEDの光に変換してダンスパフォーマンスをする、というものでしたけどね。その時は藤本(隆行)さんというダムタイプの方がディレクターでLEDのデザインもやっていて、僕は音をサンプリングして、その波形を使って曲を作るということをやって、それでずっと色んなところを旅したんですね。

さっきお話にあった新作展示『PULSE』(G/P Galleryにて11月10日~12月9日まで展示された)を見ても、真鍋さんの作品にはレーザーやLEDを用いた光学的なアプローチが特徴的ですよね。
メディアアートやインタラクティブアートでは、プログラマー以外にデザイナーの視点も伴うと思いますが、色に対してはどんな意識を持って扱っていますか?

カメラには見えるけど肉眼には見えない赤外光を利用して色々やることが多いのですが、そういう意味では色というか、波長に関してはすごく色々と役割があるので意識することは多いですね。蓄光塗料やフォトクロミック化合物を使う際には紫外線、もしくはブルーバイオレットと言われる可視光ギリギリのレーザーを使ったりとか。普通のレーザプロジェクタだと405nmという波長は暗いのであまり使われないのですが、それが使われているものを選んだりとかそういうこともあります。僕はグラフィックデザインのプロじゃないので、色に関する作業はデザイナーにお願いすることが多いです。カラーパレットを作ってもらって、それをプログラムに落とし込むといった感じですね。ライティングでもデザイナーと共同作業することも多いです。

なるほど。他に色が特徴的なプロジェクトはありますか?

例えば、やくしまるえつこの『ヴィーナスとジーザス』のPVは、カラー3Dスキャンデーターを使ったミュージックビデオなのですが、ライゾマティックスのコジコジ君というデザイナーに、カラーパレットを幾つか作ってもらっていて、それを距離のデータに変換するというプログラムを作りました。距離データを扱う際にはHSB(色相=Hue、彩度=Saturation・Chrome、明=Value・Lightness・Brightnes の三つの成分からなる色空間)のHueと距離を対応させたVisualizationが一番ベタで分かりやすいのですが、機能性、視認性をあえて低くして色で遊んでみました。VJをやる場合の色の作り方は、画像から色を抽出してカラーパレットを作ってそこから色のパターンを作ることが多いです。2009年に〈Ars Electronica〉(オーストリアのリンツで開催される芸術・先端技術・文化の祭典でメディアアートに関する世界的なイベント)で『Lights on』という作品を作ったのですが、その際に一緒に制作していたコーダー達の色の作り方が絶妙だったのでコードを読んでいたら画像から色を作っていたんですよね。しかもその画像は割と適当に撮影した画像ばかりでしたが、見事に奇麗な色合いになっていたのでそこからそのやり方を真似しています。

真鍋さんの場合は、色の原理であったり仕組みを分析した上で、色を見ているような感じがしますね。

やくしまるえつこさんの『ノルニル』や『プロポーション』、Perfumeの『Fakeit』の様にLEDで色を作る際は映像で観た時に奇麗に出ることが重要なので、かなり特殊なカラー変換テーブルを作っています。LEDの型番毎にテーブルを作っていますね。同じメーカーでも発色の具合が違ってくるので、カメラマンにアドバイスを頂きながら、毎回細かく調整します。 PWM制御(Pulse Width Modulation の略。パルス幅変調方式と呼ばれ、直流電源のスイッチのONしている時間とOFFしている時間との割合(デューティー比)で、モータを制御する)のためにやっているのではなく、実際に目で見た時のビジュアルのためにやっていますね。フレームレートが60hzの映像を作ることが多いと思いますが、レーザーの場合は48000hzで作っているのですがその辺の人間の感覚の限界を超えた部分での表現には魅力を感じます。ハイスピードカメラで撮影しないと分からない様なことでも、それをどこかで感じ取っている可能性があると思っています。

例えば、Perfumeのステージ演出だと、真っ暗な空間の中でレーザーやLEDの光学的な要素が入っていますよね。黒はご自身の仕事の中ではよく見ている色だと思うのですが。

Perfumeのライブに関してはMIKIKO先生(Perfume の振り付けを担当する振付師)がビジュアルのディレクションを担当しているので僕はそれに沿って制作しています。やくしまるえつこさんの場合は彼女自身がビジュアル面のディレクターなので「次は黒バックはやめてください」って言われることもあります(笑)。

(笑)どうしてですか?

『ルル』っていうPVの背景はほぼ白なんですよ。白というか、白い建築模型にひたすらプロジェクションマッピングをしていて。でも最初に出していた案は『ヴィーナスとジーザス』のときみたいに黒バックのものだったんですけど、「理系っぽいのはやめて、ちょっとかわいい感じになりませんか?」みたいに言われて(笑)。Perfumeのグローバルサイトのデザインは当初デザイナーチームが白バックで進めていたのですが公開数時間前にMIKIKO先生にチェックしてもらったところ黒が良いかもということで背景を変えました。結果的に黒に変えた方が良かったとデザイナー陣は言っていましたがヒヤヒヤでしたね(笑)そんな感じであまりこだわりが無くディレクターのオーダーに応じてデザインしています。

Perfumeのグローバルサイトは近未来的な手触りがありますが、真鍋さんの中には、作品に触れる人に非日常的な感覚を味わってもらいたい意識があるように感じるんですね。

グローバルサイトのデザインは木村君というライゾマティクスのデザイナーがやっているので見た目的な話は僕がするべきではないと思いますが、あのサイトで一番思い切っていることは本人達の画像が一切出てこないことですね。それなのにPerfumeであると分かるところが面白いなと。世界観の設定や振付や音楽の強さを改めて感じさせるサイトとなっていると思います。見栄え的に近未来っぽいということも重要ですが、僕があのサイトで伝えたかったのはその辺のコンセプトでした。ステージ演出は確かに非日常的な要素もあるかもしれませんが、それは演出ディレクターの意向に添って我々が開発しているという感じです。自分のプロジェクトではその辺は薄いかもしれないですね。顔に電流を流してぴくぴく動いてるやつ(http://www.youtube.com/watch?v=YxdlYFCp5Ic)とか、あれってマジックの感じします?

まず思ったのは、「この人は何者なんだろう...?」という疑問でしたね(笑)。

(笑)自分でやっているプロジェクトに関しては、そのノリに近い感じで色々とやってるんですよ。あれは、別にマジカルなことをやろうと思ってやっているわけじゃなくて、自分の中で疑問に思ったことを実際に自分の手を動かして、自分の身体で実験してみたという感じですね。逆にマジックというよりも現実的なものとして観てもらいたいので一発撮りで撮影していたり、その辺の小さなカメラで撮影したものをそのままアップしてます。

今後考えているものの中に、色に関連したアイデアはありますか?

色に関して言うと、レーザーは色が奇麗に出ないのでその辺をもう少し作り込みたいですね。高いプロジェクターを買ったら解決するのかもしれないですが。

解消されることで、いずれご自身の制作に反映されそうですね。

他にも作ろうと思って、作れていないものが結構あるんです。大きい規模のものでいうと年間2個ぐらいしか作れないし。今年は特に自分達の作品を作る機会が少なかった様に思います。そうこうしているうちに、考えていたものを誰かにやられちゃったりするんですけど、それはそれでいいんです。大したアイデアじゃなかったと思うので、諦めがつくんですよ。でも考えてから数年経っていて、まだ出来てないことがあると、だんだん自分の中で鮮度が落ちて作らなくなってしまうからもったいないなと。また新しいことをやりたくなっちゃうし、誰かのために制作するのも楽しいですしね。

貴重なお話ありがとうございました!


プロフィール

真鍋 大度 / プログラマー、インタラクティブ・デザイナー

www.daito.ws

身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し、組み合わせることで作品を制作。高解像度、高臨場感といったリッチな表現を目指すのでなく、注意深く観察することにより発見できる現象、身体、プログラミング、コンピュータそのものが持つ本質的な面白さに着目している。2006年にウェブからインタラクティブデザインまで幅広いメディアをカバーするデザインファーム「rhizomatiks」を立ち上げ、2008年には、石橋素とハッカーズスペース「4nchor5La6」(アンカーズラボ) を設立。

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