INTERVIEWアーティスト・クリエイターズインタビュー

蜷川 実花

アーティスト・クリエイターが彩る色彩の世界

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あの極彩色豊かな世界観はどのように培ってきたのか?

蜷川さんが写真に興味を持ったのは、何がきっかけとなったのでしょうか?

小さい頃から何かものを造る人になりたいと思っていました。母や従姉妹が女優、父親が演出家などものづくりに関わる人たちの環境で生まれ育ったというのは影響があったと思いますね。カメラというのは何かを作っている気分になりやすいので。ただその頃は、写真を仕事にしようと思っていたわけではありません。

では、写真を生業にするにあたっては、どんな影響が大きく作用したのでしょうか?

「とにかく自立した女性であれ」というのが我が家の教育だったので、精神的にはもちろん、経済的に自立するというのはとても大切な事でした。フリーのフォトグラファーで食べていけるか初めはとても不安でしたが、最終的には「やりたい事を仕事にする」という事を決めたのが大きいと思います。

蜷川さんといえば、やはり極彩色の作風を連想しますが、その〈色〉の感覚はどのように培われたのでしょうか?幼少期の体験、あるいはフォトグラファーのキャリアの中で形成されてきたものですか?

意外に思われると思いますが、私自身はそういった色味の強い物を意識して撮影しているわけではありません。自然とそういうものに惹かれている部分はあるとは思いますが。 私にとっては自然であって、自分の好みに忠実に物をつくっているだけなんです。〈色〉にこだわって表現しているわけではありませんが、私の写真の重要な要素の一つになっていることは間違いないと思います。

鮮烈な色を扱う中で、特に好きな〈色〉は何色ですか?

赤です。

例えば作品の被写体において、金魚や花をよく選んでいますが、その理由を教えてください。またご自身が写真を撮りたくなるものには、どんなことが共通していますか?

これは「好きだから」としか言えないのですが(笑)、写真はとどめておけないものをとどめておける。朝咲いていた花が夜には枯れている、写真はそれをとどめておける。金魚は人が鑑賞するために改良をくわえた生き物、自然の生き物でありながらそこには人間の欲が見える。そういった人間の業のようなものは惹かれる要素ではあるかもしれません。

FLOWER ADDICT
©mika ninagawa
Courtesy of Tomio Koyama Gallery
Liquid Dreams
©mika ninagawa
Courtesy of Tomio Koyama Gallery

以下の蜷川さんの作品の出力には、東洋インキの<Kaleido ©>が使われているとお聞きしましたが、仕上がりについてはいかがでしたか?
AKB48「上からマリコ」/「ここにいたこと」CDジャケット
※<Kaleido©>・・東洋インキの既存4色機で高演色印刷を実現するプロセスインキ

とても良かったですよ。写真を写真そのものでなく、印刷物にするとき、その再現性はとても重要なことです。

カメラのデジタル化、編集ソフトのハイスペック化、アプリケーションの開発などによって、写真の楽しみ方が多様化していますが、写真にまつわるテクノロジーの発達は、蜷川さんの表現にも変化をもたらしていますか?

ファッション撮影などは最近、デジタルカメラを使うことが多いです。花や金魚などはフィルムで撮って、色味も一切変えずに発表しているので、基本的に昔から変わりません。私自身は機械そのものにはそれほど興味があるタイプではないので、あまり変化はないように思えますが、印刷技術の進歩は写真を写真として発表しない場合、例えば出力などする場合に写真を再現する力が良くなっているので、展示などには良い変化が出てきました。

蜷川さんは写真家だけでなく、映画・映像監督としての顔を持っていますが、〈色〉の捉え方に違いはありますか?

映画、映像の場合、私はカメラではなく監督なので、映像に関して「撮る」という行為が発生していません。〈色〉の捉え方、という概念もあまりないのですが、写真にしても映像にしても、基本的にはある物しか写らないので、灰色のものがカラフルになることはありませんし(笑)。例えば広告などでいわゆる色味の強いものが求められている場合は、編集で色味を調整するのではなく、そのようにセットを作るんです。

今後、〈色〉を通じて実現したい表現がありましたら、そのビジョンをお聞かせください。

写真撮影そのものに関して、〈色〉を通じて表現したいということはありません。例えば私の写真を使って、洋服や文房具や化粧品等、様々なプロダクトをプロデュースすることが多いのですが、そういったときには色々な素材に写真そのものの色味が反映できるかどうかというのが課題です。〈色〉を通じてというよりも、写真の〈色〉を他の素材、例えば金属や布などで再現できるような技術には期待しています。

貴重なお話ありがとうございました!


プロフィール

蜷川 実花 / フォトグラファー、映画監督

www.ninamika.com

木村伊兵衛写真賞ほか数々受賞。映像作品も多く手がける。2007年、映画『さくらん』監督。08年、個展「蜷川実花展」が全国の美術館を巡回し、合計約18万人を動員。10年、Rizzoli N.Y.から写真集「MIKA NINAGAWA」を出版、世界各国で話題となる。’12 年2作目監督映画『ヘルタースケルター』全国公開、21億円の興行収入を記録した。

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