INTERVIEWアーティスト・クリエイターズインタビュー

大月 壮

アーティスト・クリエイターが彩る色彩の世界

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独創的かつユーモラスな作風で話題に絶えないクリエイターが語る<色>の捉え方とは?

大月さんの今日の服装はかなり多色ですが、ご自身としては何色が好きですか?

特にこの色というのはないんですよね。
淡いのがいいときもあれば、ビビットでカラフルなものが好きなときもありますし、蛍光色もモノクロも好きですしね。

身に纏うものはビビットでカラフルなものが好みなのでしょうか?

そうですね。訳の分からない服とか、派手な服が好きですよ。

派手な色の原体験としては、何が大きいですか?

割と昔から派手な色が好きですけど、何も考えずに色を使っていたら、海外のお菓子の「M&M's」の色の洪水みたいな、あんな感じになっていましたね。
海外のお菓子のパッケージって毒々しいじゃないですか。ケミカルっぽい発色というか、蛍光が好きなのもそうですけど、発色のいい色が好きですね。
配色を考えずに、とにかく色数が多くてバキバキしている感じというか。

ご自身が映像の世界に入っていくにあたって色について意識を変えられた体験はありますか?

僕は一応、美術の学校を卒業していて、色彩の授業を受けてきたんですよ。
でも本当に色に関して無頓着で、適当に扱っていたんです(笑)。
寒色・暖色とか、色が与える心理的な効果とか言われても、それを利用しようとも思わず。
学校を卒業してすぐの頃に、漫画家で映像作家のタナカカツキさんのところでお手伝いするようになった時期があるんですね。カツキさんの作品を知っていれば分かると思いますけど、すごく色遣いが上手い方じゃないですか。

独特な配色でやさしい色使いというか。でも少し奇抜な感じがありますよね。

そうそう。あの色使いが綺麗だなと思って、一緒にいる間に真似して、色を意識しながらものを作るという時期が、23歳から26歳ぐらいの間にあったんです。
アニメの仕事をした時にカツキさんが、「白と黒と紫でやろう」と言って、「あ、なるほど。色数を減らすと情報量が減って見やすいんだ」と教えられましたし、逆に色数を増やす分にも自分なりにバランスを取っているつもりだったんですけど、意図してどう寄せるとかはしてこなかったんですよね。
その他にも、僕が画面を作った時に「どうしてここだけ彩度が高いの?」って言われて、「あ、彩度ってバランスを取るものなんだ」とはじめて気付かされたのもカツキさんですね。

その後、タナカカツキさんの元を離れて、ご自身の中で培われた色使いのルールみたいなものはありますか?

ルールはないですけど、僕の仕事は基本的に映像じゃないですか。だから、基本的にはRGBで色を考えるんですね。
たまに印刷物を作る仕事がありますけど、その時はまずRGBで作って、そこからCMYKに変換しますね。それでCMYKに変換すると、どうしても発色が悪くなるじゃないですか。どうしてCMYKだと発色が悪くなるかというと、光じゃないから、色が混ざると濁るっていう。
でんぱ組.incのCDジャケット(『でんでんぱっしょん』)や『ときめきSHOWERメモリーズ』のQUOカードを印刷したときは、まさにすごく混ざった色が多かったんですよ。
だから濁らないようにパキッと色を出すために、色校でかなり直しましたね。これは完全にゲームのグラフィックなので、本当はRGBで出したいんですよね。

同様にゲームのグラフィックをモチーフにしたSPACE SHOWER TVのSTATION ID二作品を、ここ最近の大月さんの代表的な仕事として、色を切り口に聞かせてください。

『ときめきSHOWERメモリーズ』は、80年代っぽい作品でしたけど、なんとなく80年代のカラーを勉強して、PC-88っていうパソコンゲームに使われていたものをある程度再現しようとしました。
お正月のSTATION ID(『SPACE SHOWER TV "HAPPY NEW YEAR 2013!!"』)の方は、スーファミとかメガドライブとか、ファミコン以降の16bit機になるべく近付けようと。

現行のゲームと比べると、PC-88のようなパソコンゲームは明らかに使える色数が制限されますよね。

そうなんですよ。たしかにPC-88は8色しか使えないんですけど、パソコンだから解像度が細かくて、すごく限定された色数なのに描写は細かいっていうアンバランスさがあって。肌色を出すのに、黄色と白とか、黄色と赤とかを網点のように混ぜたりしましたね。
『ときめき SHOWER メモリーズ』の時は、自分が思う80'sカラーにプラス紫を使おうとしたんですよね。

どうして紫を使おうとしたんですか?

最近ヒップホップのミュージックビデオで紫がよく使われていて、トレンドカラーとしての紫を引用したいなと思っただけですね(笑)。夕焼けのシーンで紫を使っていて、当初はもっと使うつもりだったんですけど、やめたという結果になってますね。キーカラーを作ることで自由にやれなくなってしまったんです(笑)。

そこに関連すると80'sカラーとして、どんな色が頭の中にあったんですか?

青緑みたいな色合いですかね。あの作品には4人のキャラクターがいるんですけど、そのうちの一人にシーパンクっていうジャンルを割り当てていて、そのジャンルもキーカラーが緑や青で80'sカラーと色がマッチするなと思いましたね。

SPACE SHOWER TVのSTATION ID二作品について、そもそもゲームハードから着想を得た経緯というのは?

SPACE SHOWER TVのSTATION IDは色々なクリエイターの方たちがやられていて、お正月の作品について過去何年分かの資料をもらって、その中にないテイストで自分がやってみたいことという切り口で、「ゲーム風はどうですかね?」と提案したら、「今までになかったし、いいね」とさっそく話が進みまして。
着想となるような作品も実は特に意識していなかったんです。これは僕によくあるパターンなんですけど、何か不満があって、それに対して自分で解決しようとするんですよ。僕の作品に『アホな走り集』というのがあるんですけど、ご存知ですか?

はい、大月さんの代表作の一つですよね。

あれはハイスピードカメラを使っているんですね。
皆、水がパシャーンと飛び散る決定的な瞬間とかをハイスピードカメラで撮ろうとするから、「もっとくだらないことに使ったらいいじゃん」っていう、今あるものに対して「こうしたらいいのに」っていう自分の中に何か不満がある。
スーファミ風のSTATION IDもそうで、ゲーム風のグラフィックモチーフの作品を作ろうとすると、ファミコン風の作品を発表する人が多いんです。ファミコンのちょっと可愛い8bit感を好きな人が多いなと思っていて。 僕はドラクエよりもファイナルファンタジーとかウィザードリーとか女神転生のキャラクターの方が好きで、ガンダムがSDガンダムになった時もすごくがっかりしたんですよね。
「可愛い二頭身のガンダムとか意味分かんないな」って。

好きかどうかの境界線はリアルに近いキャラクター描写という点ですか?

そうかもしれないですね。洋ゲーみたいにリアルでグロテスクな描写が好きなんですよ。
ただ、この間『ピクミン』をやってみたら、「かわいいな、任天堂もさすがだな」と思ったんですけど(笑)、メガドライブの『ゴールデンアックス』っていうゲームもすごく好きでしたし、ああいう細かい描写のものをやりたいなと思って。
要するに、こういうアプローチが定番と思われているものがあったとしても、そこに不満を見いだしていたら「じゃあ、俺はこっちをやるよ」っていう、自分の不満を解決していくことで同時に新しい価値観を産もうとする自分のセオリーがあるんです。

なるほど。大月さんの作品をグラフィック、CG、実写と観させていただいて、ユニークなものからシリアスなものまで幅広いものを手掛けていますけど、一見、その作風はバラバラに見えるものの、実は共通のテーマがあるんじゃないかと思っていて。

これがないんですよね(笑)。やっぱり作品それぞれにテーマがあるので、そのテーマに則るという感じですかね。
もちろん自分の人格や自分らしさはあるんでしょうけれど、それをいちいち作品に投影していないので。
もし作品を見た人が何らかの共通のニュアンスを感じるとしたらそれは意図的なものではなくてクセだったり単なる趣向のようなものでしょうね。
でも、やっぱり話題になる作品とかいい評判を呼べる作品は、何かクリエイティブの一線を越えようという意図や強い意気込みがあるものが多い。
「もはや芸術だね」なんていう言葉がありますが、それってジャンルとしての芸術のことではなくて、自分が思っていた価値観の常識ラインを更新した時に「芸術的」と解釈して出てくる言葉だと思うんですが、そういう意味での「一線越えよう」っていう気持ちはある。それが一貫しているくらいですかね。

共通の制作テーマを設けずに作品毎のテーマに則るというのは、最初の淡い色とビビットでカラフルな色とのお話と繋がりますね。

そうですね。「じゃあ、今回は淡い色でやろうかな」と思って、淡いなりに「感動するくらい綺麗でした!」って見た人に言わせたい、その一線を越えてやろうみたいな気持ちはあるっていうことですね。
クライアントの中には、もうちょっと無難なものを求める方たちもいるから、その場合はもちろんそうしますし。だから、クライアントにも依存するということですよね。スペシャの場合は結構「やっちゃえ」って言ってくれるので、僕も自分を開放しちゃうっていう。そうやって開放される作品は定期的に作りたいですね。

TPOに合わせて洋服を選ぶ感覚に近いかもしれないですね。

たしかに。特に怒られないときは派手にしていて、怒られそうなときは相手のことを考えて着るみたいな。

振り切れているようで、実はちゃんと相手のことを見ているっていう。

いいですね、それ(笑)。結構気を遣っているのかもしれないですね。

SPACE SHOWER TV関連の作品で思ったのですが、当時のご自身に影響を与えたものが現代にどう面白く見えるか、という視点は大月さんのクリエイションに重要な要素でしょうか?

過去よりは圧倒的に「今」の方が大切ですよね。後ろ向きな意味での懐古的な気持ちはまったくなくて、過去のものを現代に利用する時にそのネタ元のモチーフが表現するものって単にビジュアルだけではないというか、その当時の時代だったり、あと当時から現代まで経過してしまった時間に内包されているものだったり、それは僕と同年代の人だったら懐かしさや思い出を想起させたりしますよね。
若者が見た場合はそれはファンタジーとして映るのかもしれない。ネットのおかげで過去の情報と今の情報が並列化されちゃった感じがあるんですが過去のものには過去にしかない情報が内包されてて、それごとコラージュして、現代化していくみたいな。
元ネタありきの情報コラージュはそういう重層的な価値がありますよね。

やりたいことを考える時に、イメージソースとして昔のカルチャーを引用するのは、どうやって導き出したんですか?

わざわざ思い出すというよりも、何かしている中で、インターネットで画像検索をしているとか、そういう中でPC-88に関しては、ああいった画像を1年ぐらい前からTumblrで見かけるようになったんですよ。
それで自分が子供の頃にやってたMSXのグラフィックとも重なる部分があって「あの感じ確かにかっこいいよな、よしやるか」と思って。それから以前ハマっていた『ときメモ』(『ときめきメモリアル』)とリンクさせて、「恋愛シミュレーションをやりたいな」と広がっていった。なぜやりたいかと聞かれても、「恋愛シミュレーションいいな」って思っているから、としか答えようがないですね(笑)。
あえて言うなら、バーチャルで恋愛するという空しさと、そこに広がるキラキラした妄想の世界の美しさ、その両面の具合が良い(笑)

PC-88の環境に、『ときメモ』を落とし込んでいることがユニークですよね。プレイステーションとはまた違った印象になるじゃないですか。いなたい感じになるというか。

いいですよね、あのPC-88の感じ。
だから、忠実に全てを再現していないんですよ。なんとなくそう見えるぐらいにしているっていう。
お正月のSTATION IDもそうで、ドット数でいうとすごく粗いんですよ。ただ、色数を無制限にしているのと、描写をなるべくリアルっぽい描写にしているから、スーファミっぽく見えるっていうだけなんです。正確過ぎる再現とかもあまり好きじゃないんですよね。デッサンみたいでクリエイティビティとは関係ないじゃないですか。

両方の作品の色使いにも表れていると思いますけど、身に纏うものだけでなく仕事で使う色も、淡いというよりはビビットでカラフルな色の方が潜在的にお好きなんでしょうね。

そうですね。オーガニックなものよりもケミカルなものの方を好んで使っていますよね。
考え方も同じで、大自然に帰ろうって考えるより、知性でなんとかしようと克服していく方が好きですね。昔の洋ゲーの色使いって日本のものとは違っていて、やっぱりバキバキなんですよ。あの毒キノコを連想させるケミカルっぽい色を見て、洋ゲーみたいな色使いで作りたいなって思いましたからね。
でも、それはひたすらGoogleと検索していっただけなので、そこで辿り着いた洋ゲーをアップしまくっているマニアな方のTumblrから落としまくっていて。ビビットな黄緑と紫が混ざっていたり、とにかくいい色使いばかりなんですよ(笑)。

今日は貴重なお話、ありがとうございました。


プロフィール

大月 壮 / 映像クリエイター、ディレクター

1977年神奈川生まれ。東洋美術学校卒業。フリーランスの映像クリエイター、ディレクター。東洋美術学校非常勤講師。

ぶっ飛んだものからマジメなクライアントワークまで柔軟に。WEBやテクノロジーを映像に取り入れるのも好きです。
過去には現代美術作家「chim↑pom」やHIPHOPアーティスト「KLOOZ」と共同プロジェクトを主催。
オリジナル作ではニコニコ動画から始まり文化庁メディア芸術祭入選まではたした「アホな走り集」が有名。
国内や海外の映画祭・映像祭での上映多少あります。
0m2.jp/

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