INTERVIEWアーティスト・クリエイターズインタビュー

YKBX

アーティスト・クリエイターが彩る色彩の世界

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独自の世界観で注目のクリエーターに、プロジェクトにおける色使いについて、その創意工夫やロジックを語っていただきました。

YKBXさんの作品はプロジェクトごとにはっきりと色使いが異なりますが、ご自身の好きな色は何色ですか?

時期によって全然変わりますね。気分によって変わるというか、毎年変わってるイメージがありますね。 それは僕の作風にもよりますけど、あまりタッチを固定しないというか、飽き性でもあるので、好きな色を引っ張らないように意識している部分もあると思います。
基本的にクライアントワークが多いので、例えばアーティストと関わるときは、プロモーションとかCMとか、案件の内容によってイメージを膨らませていくので、どういう風に仕上がっていくか、自分でも楽しみにしていますね。

今のモードとしてはどんな色が気になりますか?

「THE END」(初音ミクが主演を務めるボーカロイド・オペラ)までは、ビビッドで強い色が好きでしたけど、今はそれに対してちょっと胸焼け気味なので、色数を抑えて整理した色というか、最近は淡い色が好きかもしれないです。
例えば、ファッションにはサイクルがあるじゃないですか。ああいう感じで、自分の中にもそういったモードがあって、「もうこれはいいかな...」と思ったものも、時間が経ったら、「こういう風にアレンジ出来たら新しいかも」となったりしますね。
だから、自分の作品も厳しく見てしまって(笑)。

ご自身の色彩感覚を培っていく中で、転機となった体験はありますか?

一番大きかったのは、任天堂に在籍していた時期があって、例えば、ディズニーとかもはかなりロジカルに分析してキャラクターを作っていて、それは任天堂も同じというか、色から与える情報や視覚の刺激の仕方を勉強したことで、引き出しが凄く増えて、色に対する考え方も変わりましたね。
映像に関しては、僕は実写から入ってるので、アニメーションで光の加減とか空気感とかを出したい場合、実写に近いか、もしくはそれ以上の雰囲気にすることを意識していて。アニメーション、2D、イラストにしたからといって、フォーマットによって温度を失いたくないという想いがあるんです。

YKBXさんはamazarashiを最たる例として、ミュージックビデオとビジュアルイメージの制作といった、アーティストと音楽作品の総合的なクリエイティブに携わっていますが、企画の段階から深くコミットしていますよね。元々、音楽に携わりたい欲求は強かったのですか?

強かったですね。自分もバンドをやってた時期があったし、ものすごく音楽を聴いてきたんですよ。ピアノとかも小学校の時にやっていましたし。
それと、音楽を聴くことと並行して、音楽系の雑誌に載ってるアーティストのインタビューを読むのが異常に好きでしたね。
amazarashiについてはクリエイティブに深くコミットしている故に、ある意味ではバンドのメンバーという見方が出来るような気がしていて。
ちょうどamazarashiの仕事を始める頃は、本当に音楽業界の元気が無い気がしていて、暗い話を聞く事が多かったんです。でも、僕からすると、音楽はすごく偉大なものというか、ものすごいエネルギーを持っているし、一瞬で空気を変えられる。
僕なりに色々と思っていることがあって、せっかく音楽に関われるのならば、新しいモデルというか、拡張性のあることを提案できたらなと思ってました。

amazarashiのプロジェクトにおいて、色に関して意識していることはありますか?

amazarashiの場合は、amazarashiに成り得る記号というか、シンボリックなアイテムやマークがあるので、結構コントロールはし易い部分はあるんですけど、楽曲のテイストを邪魔しない色使いを意識してますね。作品ごとにキーカラーを決めるんですけど、リード曲とアルバムのテンションに合わせて決めていて。
例えば、最新作の『ねえママ あなたの言うとおり』はガラスが割れてる感じのビジュアルですけど、あれは10代の脆い心情を出しているんです。単純に青さのブルーに加えて、amazarashiのスモーキーで雨が降ってるニュアンスを入れたくて、あの色になっていますね。

YKBXさんが手掛けるamazarashiのクリエイティブはどれも鮮烈な印象を残すので、ミュージックビデオをきっかけに、amazarashiを好きになったという人も少なくないと思うんです。

たしかに入口がミュージックビデオという人は多いと思いますし、ビジュアルはフックとして大事ですよね。

秋田さんとはミュージックビデオやビジュアルイメージを作り上げていく上で、どんなやり取りをしているのでしょうか。

秋田さんとのやり取りはそんなに頻繁にはしないです。
でも、自分の中には、対バンというか毎回セッションをしているような感じがあるんです。秋田さんがこういうアプローチの曲で来たから、僕はこう返したら面白いかなって。
あとは映像ディレクターとして活動していると、プロジェクトの度にチームで作っていくじゃないですか。
イメージや演出プランを出したり、絵コンテを描くときもそうですけど、「リリースに向けて、ライブで、こういう感じにやれたら面白いと思ってもらえるかな」とか、なるべくテンションが上がるものを出せたらと毎回思っていますね。

作風を維持したまま毎回異なったグラフィックや映像を作り続けるために、普段からインスピレーションソースとなるものを模索しているのでしょうか。

僕自身がかなりの雑食で、メビウス、ニコラスド・クレーシーとか海外のコミックやアーティストの作風も好きですし、好きなフォトグラファーもたくさんいて、今もかなり買ってますけど、大学のときは写真集をひたすら買い漁ってましたね。
映画もすごく見るし、ファッションショーとかを見るのも好きで。色って、テキスタイルと素材だけでも発色の仕方が違うじゃないですか。実はデジタルのスクラップブックみたいなものを作っていて、そういったものもたまに見てインスピレーションを得たりしてますね。

Tumblrやブラウザの画像検索から気になったものをひたすら保存するという感じですか?

そうですね。自分にしか分からない管理の仕方があるんですけど、一気にフォルダに放り込んで、Adobe Bridgeのビューワーで見るんです。Bridgeってサムネイルのサイズを細かく調整できるじゃないですか。 なんとなく好きなサイズ感にして、一画面に出て来る情報を整理できるんですよね。あちらこちらにメモとかアイディアをストックしてるというか。

どんな感じにフォルダ分けしているんですか?

色もありますし、シェイプ、ポージング、フレーミングとか、あとは僕なりに感じる雰囲気みたいなものですね。
それぞれにすごくかっこいいなと思えるポイントがあって、何でもない写真だけど、ある一部のディテールだけがすごくいいとか、そういったものもあります。

なるほど。次に、初音ミクのオペラ作品「THE END」では、映像とキャラクターデザインと共同演出を手掛けていますが、伝統的なオペラで描かれる「死とは何か?」というテーマの描写について、色使いで意識したことはありますか?

「THE END」はかなり深く設定を作ってるので、ざっくり言うと、死を描くということは逆に生を描かなければいけなくて。それを無意識に見ている人が感じられる構成、いわゆる感情のグラフというか、展開に合わせた気持ちの振り幅みたいなものを計算しているんですね。
死と生を描くというところで、一度グレースケールにトーンを落としていて、「死」が一番のブラックだとしたら、「生」が一番のホワイト。劇中でもブラックアウトとホワイトアウトが実際にあって、かなり大きく演出に関わってる場面なんですね。
ライティングもそれと同じように設計してるというか、基本的にミクのように決まったキャラクターは、髪の毛も肌の色も気分に合わせて変えることは出来ないので、ライティングで緑とか赤いカラーライトを使って、色を作っている部分もあるんです。

よくライブの演出で使われるような。

そうですね。あとはリムライトっていうバックライトみたいに輪郭を浮き上がらせるライトを多用して、絵作りをしてますね。

なるほど。キャラクターの描写に制約がある部分は演出方法を工夫することで補ったんですね。

最初から、オペラだけどクラシックなものにまとめるっていうプロジェクトでもなかったし、新しいフォーマットを作るぐらいの感覚でしたからね。人が出ないっていう時点でちょっと狂ってるじゃないですか。 映像なので、初音ミクの大きさを自由に変えられるし、スクリーンが6枚もある。結構大変でしたけど、自分の中で方法論が見えた時は、やりやすくなりました。

色使いという意味では、どんな方法論が見えてきましたか?

色で難しいのは、スクリーンを立体的に組んでるので、モニター上で作っている色がそのまま出ないんですよね。見る角度によって違うし、プロジェクターや光量の調整だけでも、ものすごく変わるんですよ。すごくデリケートでしたね。
東京公演のときは後ろのスクリーンを白にしていたんです。
でも、そうすると、逆に黒が出ないんですよね。完全暗転が舞台の設計上出来なくて。非常灯とか、座席の下のライトとか、それを拾ってしまうから、少しグレーが残っちゃうんですよ。

なるほど。完全な黒が出ないと、先ほど仰っていたブラックアウトが成立しないんですね。

そうなんです、思った色が実は出せていなくて。
「THE END」は記録写真みたいな感じで写真家の新津保健秀さんに、ホワイトバランスを調整して、本来はこの色で出てほしいみたいな感じで撮影してもらっていて。その色だったら、割とイメージに近いというか。
発色は結構大事ですね。基本的に映像はモニター越しに作業するじゃないですか。RGBで色を設計すると、このぐらいは色が出てほしいみたいな気持ちがあるので、印刷物の仕事でCMYKに変換するときにすごく面倒くさいというか。
特色を使わなきゃいけないし、そこが面白くもあるんですけど。RGBからCMYKへの変換は、もう2013年ですし、そろそろ解決してもいいんじゃないかな、とは思いますね(笑)。


プロフィール

YKBX / 映像クリエイター、ディレクター

各種映像作品のディレクションや制作に加え、イラストレーションやグラフィックデザインなどを手掛ける。
トータルアートディレクションを目指した作品を数々制作し、国内外の映画祭やイベントで高く評価される。
2013年5月に渋谷オーチャードホールで行われるボーカロイド・オペラ『THE END』では共同演出と映像ディレクターを務める。
また同作は11月にパリ・シャトレ座での海外公演も決定している。
http://yokoboxxx.com/

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