増田セバスチャン
アーティスト・クリエイターが彩る色彩の世界

Kaleido®を使った本当の色探し。増田セバスチャンが自身初となるZINE『TRUE COLORS』を発表。
"Kawaii"カルチャーのパイオニアがずっと抱えてきた印刷メディアへの悩み。それをクリアにした新たな印刷技術との出会い、Kaleido® のインプレッションを語る。
2015 年12月2日(水)までTOKYO CULTuART by BEAMSにて開催中の『Here is ZINE tokyo』は、「ここにしか無い一冊を作る」ことをテーマに、気鋭のクリエイターたちが手作りZINE(リトルプレス、小冊子、同人誌)を発表している企画展だ。今回で第11回目となる同展は、作家たちがクライアントワークから離れて、自由な発想でクリエイティブの原点と向き合える場でもある。そんな作り手のイメージをダイレクトに表現できる機会に、アートディレクターの増田セバスチャンさんが参加した。
増田さんといえば、ビビッドな色使いで知られるクリエイター。きゃりーぱみゅぱみゅさんのビジュアルプロデュースや、原宿に今夏誕生した『KAWAII MONSTER CAFÉ』のプロデュースをはじめ、今や世界共通の言語となり得る日本独自の"Kawaii"カルチャーを、自身の拠点である原宿から世界に向けて発信するアートディレクターだ。先日TOYO INK 1050+のインタビューにも登場し、増田さんを紹介する上で不可欠な色の価値観を語ってくれた。最近ではニューヨークで個展を開いたことも記憶に新しく、その活動の幅はエンターテイメントの領域に留まらない。そんな色をテーマに制作を続けるクリエイターがはじめて作ったZINEは、やはり色にフォーカスした作品だった。サイズ、ページ数、テーマも自由という環境の中、増田さんが発表したZINEとはどんなものだったのだろうか。


増田さんが制作したZINEのタイトルは『TRUE COLORS』。直訳すると「本当の色」だが、増田さんは自身が考える本当の色について、次のように説明してくれた。
「『TRUE COLORS』は僕にとって一生の課題です。僕の作品に触れてくれた方たちは、その色使いを通じて感動してくださる。だから、僕は色が与える感動とは何かを追求していきたいと考えていて、それこそがTRUE COLORSだと思うんですね。これまで僕が作った作品を印刷物で再現すると、実物の色味と程遠いアウトプットになってしまうことが多かったんです。印刷物に満足できることはほとんどなくて、印刷技術に対して諦めていた部分がありました。それでも、はじめてのZINEは色をテーマにしたかったですし、満足できる印刷物を作るためには色の再現が最も重要だったんですね」
自身が求める本当の色を再現するために、増田さんが決めたのは東洋インキ独自のプロセスインキ、『Kaleido®』の採用だった。Kaleido®は既存のインキでは実現できない発色を再現するために、これまで6,7色印刷でしか再現できなかった鮮やかな色合いの印刷物を、4色で再現することを可能にした画期的なプロセスインキだ。従来では考えられない色の再現性は、色にプライドを持つデザイナー、カメラマン、出版社などの悩みを解決してきた。
「東洋インキの担当者さんとコミュニケーションをとっていく中で、従来のCMYKではなくCMYGというブラックの代わりにグリーンを調合して印刷する方法があることを教えていただいたんです。そんな方法を今まで知らなかったですし、それを使うことで今まで悩んできたグリーンの発色が綺麗に再現できるかもしれないと、はじめて印刷に希望を持てました。実際に刷り上がった印刷物には満足していますし、Kaleido®という新しい技術を使うことで、味でいうコクや旨味を含めた表現の広がりが出来たと思います」


確かな手応えを感じた増田さんは今後もKaleido®を積極的に使っていきたいという。Kaleido®の特性をもっと知ることによって、さらに色味を調整しながら作品づくりに取り組むことができる。Kaleido®があるということを分かった上で制作に取り組むと、色使いのアプローチに変化が生まれるかもしれない。つまり、Kaleido®は印刷工程だけでなく増田さんの制作そのものに影響を与える可能性を秘めているのだ。ちなみに『TRUE COLORS』は増田さん制作のビジュアルを全面に使ったポスター仕様。表にはTOYO INK 1050+のロングインタビュー(/interview/019.php)が掲載されている。
「Kaleidoを使ったことで、印刷物における本当の色探しのスタート地点に立てたと思います。来年は"Kawaii"を超えて、色についてのポテンシャルとキャパシティを広げる制作にチャレンジしたいと考えています。まだ具体的なことを発表できませんが、"Kawaii"は波及しているので、これからは身近な色についての研究と制作を結び付けていきたいですね」
関連リンク
Kaleido®
プロフィール

増田セバスチャン / アートディレクター/アーティスト
1970年生まれ。
演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。
2011年きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」MVの美術で世界的に注目され、六本木ヒルズ「天空のクリスマス 2013」のクリスマスツリーや、原宿観光案内所 「MOSHI MOSHI BOX」の世界時計のモニュメントなどを制作。2014 年からニューヨークを拠点にアーティスト活動を開始。2015年夏現在はアートプロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」をニューヨークで開催中。