SUSTAINABILITY01

持続可能な社会とは?

持続可能な社会とは、「地球環境や自然環境が適切に保全され、将来の世代が必要とするものを損なうことなく、現在の世代の要求を満たすような開発が行われている社会。」と言われています。経済発展、技術革新により、人々の生活は物質的には豊かで便利なものとなりましたが、一方で私たちのこの便利な生活は、私たちが豊かに生存し続けるための基盤となる地球環境の悪化をもたらしています。
産業革命以降、温室効果ガスの排出量の急激な増加は気候変動を引き起こし、世界中で深刻な影響を与えつつあります。環境汚染物質は水、大気、土壌を汚染し、鉱物・エネルギー資源の無計画な消費は、環境を破壊するだけでなく、時として奪い合いのための紛争を引き起こしています。さらに、現代は「第6の大量絶滅時代」とも言われ、開発や乱獲等人間活動を主な原因として、地球上の生物多様性が失われつつあります。
こうした問題意識から、持続可能な社会に向けた取り組みが世界で広がりつつあります。まずは今、世界がどのような状況にあるのか、データをもとに見ていきましょう。

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SECTION01地球の健康状態は悪化している。

生物の多様性は
世界的に減少している。

1970年と比べると、2012年は「生きている地球指数※」が58%低下しています。特に熱帯地域では60%も低下しており、生物の多様性が脅かされています。

「生きている地球指数」とは
地球上の生物多様性の豊かさを示す指数(Living Planet Index:LPI)。世界の約3,700種の脊椎動物の約10,000以上の固体郡のデータをもとに、生物種の増減をひとつの数値で表したもの。

生態域別の生きている地球指数の変化(1970年~2008年)
出典:生きている地球レポート2016要約版

森も減少している。

世界の森林面積は約39.9億ヘクタールで、全陸地面積の30.6%を占めています(2015年) 。しかし、世界の森林は減少を続けており、毎年510万ヘクタールが減少しています(1990年から2015年までの平均の純変化) 。
また、1990年から2015年までに減少した1.29億ヘクタールの森林面積は南アフリカの国土面積に匹敵します。

世界の森林面積の地域別純増減(1990年~2015年)
出展:国連食糧農業機関(FAO)(2015年)
Global Forest Resources Assessment 2015」より作成

地球の平均気温は
上昇している。

世界の平均気温は年々増加しており、1880年から2012年の132年間に地球の平均気温は、約0.85℃上昇したと公表されています。これは、地球が今までに経験したことのないスピードで、人間活動による影響の可能性が極めて高いといわれています。(引用文献*1)
温室効果ガスの排出量の増加に起因する気候変動の問題は、集中豪雨や高温などの異常気象を世界各地で引き起こしています。このまま有効な温暖化対策に取り組まない場合、世界の平均気温は、21世紀末には約4℃前後も上昇すると予想されています。

*1 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「第5次評価報告書」2014年

世界の年平均気温偏差(1990年~2015年)
*2  RCPシナリオ8.5 の場合
出典)IPCC第5次評価報告書、気象庁「世界の年平均気温偏差(℃)」をもとに作成
※2000年~2015年までの偏差の基準値は1986年~2005年の平均値を0.0℃とする
2085年以降の予測部分は複数の気候予測モデルに基づく予測データ
1981~2010年の平均値を0.0℃とする

SECTION02人間活動にともなう環境負荷の増大

地球人口は急激に増加。
2050年には世界人口は約98億人に

産業・農業技術の発展、食糧生産の増加、医療技術の進歩による死亡率低下など、生存条件が揃ってきた19世紀末ごろから、地球人口は急激に増加しています。2050年には世界人口は約98億人に達すると予測されています。

地球人口は急激に増加。2050年には世界人口は約98億人に
資料:国連人口基金東京事務所ホームページより作成

化石燃料の大量消費時代

産業革命以降の人類社会は、大量生産・大量消費時代を迎えました。これを支える大きな原動力となったものが、石炭や石油などの化石燃料です。 化石燃料の消費は、自然のシステムの処理能力を超えた二酸化炭素の排出も招いていきました。

出所:オークリッジ国立研究所

燃料別に見る二酸化炭素の排出量

世界人口の増加と
ともに進む水不足

地球上にある水は約14億km3ですが、人間が容易に使える水は全体のわずか0.01%にしか過ぎません。
限られた水資源において、世界の水の使用量は1950年から1995年の間に、約2.74倍となっており、同期間の人口の伸び(約2.25%)よりも高い結果となっています。人口増加と人間の水利用量の間には高い相関関係があり、2025年までの数値予測でも人口と水利用量はともに急増する見込みです。水不足は結果として作物の不作や食料不足、中東やアフリカのような地域では国際紛争の火種にもなり得、また生物多様性を損なう環境問題もひき起こします。

燃料別に見る二酸化炭素の排出量
UNESCO “World Water Resources at the Beginning of the 21st Century”(2003)を基に作成

貧困、格差拡大、紛争…
さまざまな問題

全世界で極度の貧困の中で暮らす人の数は、1990年の19億人から、2015年は半分以下に減少しましたが、全世界で8億人以上が今でも、1日1ドル25セント未満で暮らし、十分な食料やきれいな飲み水、衛生施設を利用できない人々が多くいます。 世界の最富裕層の10%が全世界の所得の40%近くを占有しています。最貧層が全世界の所得に占める割合は、わずか2%から7%にすぎません。人口規模を考慮に入れると、開発途上国では所得格差が11%拡大しました。格差の拡大は紛れもない事実です。
また、世界には、紛争と暴力という無限の悪循環に陥っていると見られる地域もあります。激しい武力紛争と情勢不安の高まりは、国の開発に破壊的な影響を及ぼし、経済成長を損なうだけでなく、コミュニティ間にしばしば数世代にも渡る長期的対立をもたらします。紛争地域では、性暴力、犯罪、搾取、拷問も蔓延しています。

SECTION03地球1個分という解決をめざす

2050年には
地球3個分の扶養力が必要

地球の扶養力を表す指標「エコロジカル・フットプリント」によれば、1970年頃には地球1個分でかろうじて人間活動をまかなえていたものの、2010年にはすでにキャパを超え、2050年には地球3個分の扶養力が必要と試算されています。

2050年には地球3個分の扶養力が必要

より良い選択を行う。

地球一個分の需要で暮らすには、よりよい生産とより賢い消費が必要となります。生物多様性を保全し、健全な生態系を維持することで、食料とエネルギー、水をすべての人に公平かつ安定的に供給できることにつながります。

自然資本の保全

  • 劣化した生態系や生態系サービスを復元する
  • 重要生息地の消失に歯止めをかける
  • 保護地域を大幅に拡大する

より良い生産

  • 投入する資源の量と廃棄物の量を削減する
  • 資源を持続可能に管理する
  • 再生可能エネルギーの生産を拡大する

より良い消費

  • フットプリント*が少ない生活習慣を実現する
  • 持続可能なエネルギー消費に変える
  • 健康的な消費を促す

*フットプリントとは私たちが消費する資源を生産し、社会・経済活動から発生する二酸化炭素を吸収するのに必要な生態系サービスの総量

金融投資の流れの改革

  • 自然の価値を査定する
  • 環境面および社会面のコストを勘定する
  • 自然保護、持続可能な資源管理および技術革新を支援、奨励する

公平な資源管理

  • 今ある資源を共有する
  • 公平で生態学的な影響を考慮した選択をする
  • GDPを超えた成功指標を用いる

出展:「生きている地球レポート2016」WWFインターナショナルをもとに作成

持続可能な社会を目指すための
国際社会共通の目標SDGs

「SDGs(エスディージーズ)」とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月に国連で開かれたサミットの中で決められた、国際社会共通の目標です。
その達成のために、先進国も途上国も含め全ての国が行動し、各国政府や市民社会、民間セクターを含む様々なアクター(主体)が連携し、「グローバル・パートナーシップ」を築いていくこととされています。

「SDGs」とは?ABOUT SDGs

COLMUN
世界で広がるESG投資

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものです。企業の価値を測る尺度として、業績や財務の情報だけでは企業経営の持続可能性を判断するには不十分とし、環境・社会・ガバナンスといった非財務情報を企業評価に取り入れようとする動きが急速に拡大しています。

世界のESG投資残高の推移
出典:GSIA “2016 Global Sustainable Investment Review” をもとに作成